「茶色は優性」は単純化しすぎ
学校では、目の色は茶色が優性で青が劣性、と教わった人が多いはずです。両親の遺伝子型から子供の目の色を予測する表(パネットスクエア)を書いた記憶がある人もいるでしょう。
この説明は傾向としては当たっていますが、仕組みとしては正しくありません。目の色はひとつの遺伝子で決まる形質ではなく、複数の遺伝子が関わる「多遺伝子形質」です。だからこそ、単純な予測表では説明のつかない組み合わせが実際に生まれます。
関わっている遺伝子
目の色にもっとも大きく関わるのは、15番染色体上にある OCA2 と HERC2 です。
- OCA2: メラニンの生成に関わるタンパク質を作る遺伝子
- HERC2: OCA2のすぐ隣にあり、OCA2の働きをどれだけ強めるかを調節するスイッチのような役割
HERC2の特定の位置に変異があるとOCA2の働きが弱まり、虹彩のメラニンが減って明るい色になります。青い目は、この変異が両親の双方から受け継がれた場合に現れます。
さらに SLC24A4、TYR、IRF4、SLC45A2 といった遺伝子も最終的な色合いに影響します。これらが少しずつ効くことで、「濃い茶色」から「明るい青」までの連続的な幅が生まれます。
色は段階ではなく連続している
もうひとつ重要なのが、目の色はもともと連続的だという点です。ブラウン、ヘーゼル、グリーン、ブルー、グレーという区分は人間が後から引いた線であり、自然界には境界がありません。
ヘーゼルや琥珀の分類がこれほど揺れるのは、この連続性のためです。遺伝子が「ヘーゼルを作る」のではなく、複数の遺伝子の組み合わせがメラニンの量と分布を決め、その結果がたまたまヘーゼルと呼ばれる範囲に落ちる、という順序になります。
両親の目の色から予測できること
多遺伝子形質なので確実な予測はできませんが、傾向としては次のようになります。
- 両親とも青: 子供も明るい色になる可能性が高い。ただし絶対ではない
- 両親とも茶色: 子供も茶色になることが多いが、両親が明るい色に関わる変異を持っていれば青や緑もありうる
- 片方が茶色、片方が青: 茶色になることが多いが、明るい色も十分に起こりうる
「茶色い目の両親から青い目の子供が生まれた」というのは遺伝的にまったく矛盾しません。逆に、それを理由に親子関係を疑うのは誤りです。
生まれたときの目の色は変わる
多くの赤ちゃんは、生まれた時点では虹彩のメラニンがまだ十分に作られていません。そのため青みがかったグレーに見えることがあり、成長とともに色が濃くなっていきます。
変化の方向は一方通行で、薄い色から濃い色へと進みます(青 → 緑 → ヘーゼル → 茶)。逆に濃い色から薄い色へ変わることはありません。多くの場合3歳頃までに安定します。詳しくは目の色は変わる?で扱っています。
日本人の場合
日本人を含む東アジアの集団では、HERC2の明るい色に関わる変異がほとんど見られません。そのため日本人の目の色は、ほぼすべてが濃い茶色から明るい茶色の範囲に収まります。
ただし範囲内での幅はあり、同じ家族でも濃さが異なることは珍しくありません。これも複数の遺伝子が少しずつ効いている、多遺伝子形質らしい現れ方です。
自分の遺伝子が何を作ったかを見る
理屈はここまでですが、自分の虹彩に実際に何が現れたのかは、鏡を見ているだけでは正確にわかりません。光の条件が判断を大きく左右するからです。
自分の目の色の確かめ方の手順で自然光の下で撮影し、AIの瞳分析にかけると、ベースの色と隠れた色味、そして希少度の目安まで確認できます。遺伝子の組み合わせが自分に何をもたらしたのかを知る、いちばん手軽な方法です。